ベースを弾いていく中で誰しもが一度は憧れを抱くもの、それがエフェクターです。
足元に無骨な機材を置いて踏みながら演奏する姿に、「かっこいい箱みたいなのなんだろう?」「あれがあればきっともっといい音が出るはず!」と興味を惹かれ自分で調べてみたり、購入してみたいと思っている方も多いのでは無いでしょうか?
しかしエフェクターというのは非常に種類が多く、同じ効果をもたらす機種でもメーカーから様々なモデルが発売されています。
大体の人は「調べてみたけどよくわかんないな…」となってしまい、結局買わなかったり買っても何が何だかよくわからずに買ったりということが非常に多いです。
エフェクターというのは実はそんなに難しいものではありません。
しかし、ネットなどで調べるとその「情報量の多さ」でほとんどの方が混乱してしまっている可能性が高いです。
まだエフェクターを購入したことがない方、ベースを始めたばかりの方は、膨大なエフェクターの知識ではなく、もっとシンプルに活用できる最低限の知識を知っておくことが大切です。
それを知っていれば、もう少し難しい話をされた時も土台がわかっているのでそこから派生させることでより早く深く理解することができます。
そこで今回は、ベースにおけるエフェクター関連の基本的な知識と、何を買えばいいか迷っている方、初めてエフェクターを買われる方が優先して買うべきエフェクターをピックアップしてまとめてみたいと思います。
目次
そもそもエフェクターって何?
まずは一番根本的な話として、エフェクターそのものについて説明をしていきたいと思います。
皆さんはエフェクト(Effect)という英語はご存知ですか?
Effectというのは日本語で「効果/影響」という意味の言葉です。
つまり、エフェクターというのは「ベースの音に対して何かしらの効果をつける機材」のことを意味しています。
曲の雰囲気や曲中に何か変化をつけたい場合、このエフェクターという機材をベース本体とアンプの間に挟んであげることで、そのエフェクターを起動させると出音にエフェクトが反映されるという形になります。
例を出してみると、ASIAN KUNG-FU GENERATIONさんの「遥か彼方」という曲があります。
冒頭部分がベースのフレーズから始まるのですが、そこの音をちょっと聞いてみましょう。
いかがですか?
普段自分が聞いているベースの音に比べると違和感を感じませんでしたか?
この曲では本人の方は「オーバードライブ」というエフェクターを使用して演奏しています。
オーバードライブというエフェクターをかけると、音割れしたような「バリバリ!」っという特徴的なサウンドを演出することができます。
本来音割れというのはある程度大きな音量を出すことでスピーカーがそので音の大きさに耐えられず「バリバリ!」っとなるものなのですが、このオーバードライブというエフェクターを使用することで、たとえ音が小さかったとしても強制的に音割れしたような効果を演出してくれるのです。
それによってよりロック寄りのサウンドになり曲の雰囲気がいい意味で荒々しくなり、疾走感などを演出することができるのです。
このようにエフェクターを使い音に様々な効果を与えることで演奏者の表現をより豊かにしてくれるのです。
演奏中にエフェクターを使う場面も多いので、基本的にエフェクターというのは足で踏んで操作をします。
なのでバンドマンの中ではこのエフェクターのことを「足元(あしもと)」という言い方をし、お互いに「いい音してるね!足元何使ってるの?」というように音作りについて話をしたりするのです。
初心者の方が優先して買うべきエフェクター3つ
それではこれからエフェクターを買いたいという人はまず何から買っていけばいいのでしょうか?
「自分が演奏したい曲が決まっていて出したい音も決まっている」という人に関してはその音を出すためのエフェクターを購入する形になると思いますので、ここではあくまでも「これからベースを演奏していく上で汎用性の高い順」という形で上位3つを紹介していきたいと思います。
優先順位1:コンプレッサー
まずはじめに優先して買うべきエフェクターは「コンプレッサー」というエフェクターです。
コンプレッサーとは、Compress(圧縮する)という言葉から来ているエフェクターで、音圧(音量)を設定したラインまで圧縮してくれる効果をもたらします。
エフェクトをかけても出音に大きな変化が起こったようには感じないと思いますが、実はたくさん弾いていく音の中で、小さい音はある程度大きく増幅し、大きな音は小さな音にある程度圧縮してくれています。
それによってどのような効果があるかというと、「音の粒が揃うことで上手く聞こえる」ようになります。
プロやベテランのベーシストは安定した音粒を自分の腕で奏でていくことができますが、もちろん初心者の方はそうはいかないですよね。
演奏中指の引っかかりやピックの当たり具合によって音が大きくなってしまったりし遺作なってしまったりというのははじめのうち仕方がないことなのです。
そんな時にこのコンプレッサーをうエフェクトをかけてあげることで、音の粒が全体的にまとまってくれるので、すごく安定したようなうまさで聞こえてくれるのです。
このように書くとごまかしているみたいに聞こえるかもしれませんが、これは聞き手にとっては非常に大切なことです。
練習の際にはこのエフェクターに頼らないで自分の腕で粒を揃えるように練習するべきですが、本番と練習は違います。
せっかく聞いてくれる人がいるわけですから、その人に少しでもいい演奏を届けるためにもこのエフェクターは使うべきなのです。
決してごまかしではなく、聞いてくれる人に対する配慮ですね。
また、今後ベースを練習していくと「スラップ(チョッパー)」という奏法を演奏する機会が出てくるでしょう。
スラップという奏法は通常に指弾きやピック弾きに比べてで音が大きくなる傾向があるため、指弾き用の音量設定でやるとうるさくなり過ぎてしまうことがあります。
そんな時にもこのコンプレッサーをかけてあげることで、出音の大きさに差がつきすぎることを防いでくれます。
一台持っていると初心者時代から上級者になっても何かと手放せないエフェクターになると思います。
優先順位2:オーバードライブ
冒頭部分でも紹介したエフェクターで、「歪み」という音割れの効果を人工的に作り出すことができるエフェクターになります。
ベース用のアンプの中では最も音の変化がわかりやすいものの一つで、それによりこれを使うことで曲の雰囲気などもガラッと変えることができます。
ロックやパンクなどの楽曲では、オーバードライブをかけた攻撃的なサウンドにすることでより疾走感や荒々しさを演出することができ、特にピック弾きとの相性は抜群です。
オーバードライブは「歪み系」と呼ばれる種類のエフェクターになり、他にも「ディストーション」「ファズ」という歪みエフェクターもありますが、初めて買うのであればオーバードライブを買っておけば間違いないでしょう。
使い方としては、もちろん音色自体を変えるために使うというのもありますが、薄めに歪ませることでバンドサウンドへのなじみが良くなるようにするという使い方もされます。
歪みの音というのは音の隙間を埋めてくれるという効果もあるようで、少人数編成のバンドではこの効果をうまく使って音に厚みを持たせることもされるようです。
また、ベースソロなどの時にオーバードライブをかけるとギタリスト顔負けのサウンドでかっこよく弾くことができます。
しかし、歪みサウンドは音作りを間違えると非常に抜けの悪い埋もれた音になりやすいので、安易にたくさん歪ませたりするのはあまりよくないかもしれません。
優先順位3:プリアンプ
これは少し上級者向けのエフェクターになりますが、より細かい音作りの際には欠かすことのできないエフェクターです。
アンプにはVolumeやGAIN以外に「イコライザー」という高音域・中音域・低音域の量をそれぞれ調整するためのつまみがついていますよね。
簡単にいうと、プリアンプというのはアンプのこの部分を抜き取ったもになります。
また、アンプにはそれぞれのメーカーで音に個性があります。
それはアンプの中の回路に使われている部品や仕様の違いなどの違いによって現れてくるもので、当然プリアンプにもそれぞれ個性があります。
要するに2重で音色の調整ができるというわけですね。
アンプで大まかに作った音をさらに細かく調整することができますので、音作りに自信がある人はその分自分の理想の音に近づけることができるようになります。
実際にはアンプでしっかりと設定ができれば十分いい音を作ることができますが、プリアンプを使うことで痒い所に手が届くといった印象ですね。
またプリアンプを持っているということは、自分好みの音の調整がされたアンプを持ち歩いているようなものです。
なので音作りの際にライブハウスやスタジオごとにアンプのメーカーが違ったりしてもある程度同じような音が安定して出すことができるというメリットがあります。
ライブに出るなら足元チューナーも!
家で練習する際には別に必要なものではないのですが、エフェクターを使う多くの場合がおそらくライブになるのではないかなと思います。
もしあなたがライブで使うためにエフェクターの購入を考えているとしたら、エフェクターの前にまずは最優先事項として「足元チューナー」を用意するようにしましょう。
おそらくチューナー自体はみなさん持っていると思いますが、始めたばかりの人はほとんどがクリップチューナーかカード型チューナーかのどちらかを持っているのではないでしょうか?
確かに、このチューナーでもチューニングできなくはありませんが、クリップチューナーのようなタイプは周りの音が大きかったりすると正確なチューニングができなかったり、カード型チューナーでシールドを繋いでチューニングしようとしてもいちいちアンプからシールドを外さなきゃいけなかったりと非常に使い勝手が悪いです。
足元チューナーを使うと、周りの音に左右されないのでライブという環境下でも正確なチューニングができますし、オンにすることで勝手にミュートがかかり余計な音が出なくて済む、エフェクターの一部としてつなぐことができますのでいちいちアンプからシールドを外さないで済むなどかなり多くのメリットを発揮してくれます。
出音自体に影響を及ぼすものではないのですが、ステージに立つ予定がある方は用意しておくことを強くおすすめします。
コンパクトエフェクターとマルチエフェクター
エフェクターというのは大きく分けると「コンパクトエフェクター」と「マルチエフェクター」の2種類に分けることができます。
どちらが良い・悪いということはありませんが、それぞれにメリット・デメリットがありますので違いについて知っておきましょう。
コンパクトエフェクター
エフェクターというのは音に様々なの効果を発生させますが、この種類のエフェクターは「1台につき1つの効果だけ」発生させることができます。
したがって、複数の効果を得ようとする際には、その効果の数だけエフェクターが必要となってきます。
また、コンパクトエフェクターを揃えると、それぞれのエフェクターを繋ぐ必要が出てくるため、繋ぐためのケーブルが別途必要となったり、持ち運びのために専用ケースでエフェクターを組んだりということが必要となってきます。
しかし、それぞれにしっかりとした個性と音質があるため、好みのものを自由に選ぶことができます。
「カレーはこのお店が美味しい」「あそこのラーメンが好き」というように、食べ物に好みやそれぞれのお店に特徴があるように、コンパクトエフェクターというのはいわば「それぞれの効果の専門店」なわけです。
自分の好みや好きなベースの音を追い求めていくときにはこのコンパクトエフェクターがおすすめです。
マルチエフェクター
それぞれの音色の専門店であるコンパクトエフェクターに対して、このマルチエフェクターというのは「一つのエフェクターで様々な音色」を発生させることができます。
コンパクトエフェクターが一つ1~3万円ほどするのに対して、マルチエフェクターは安いものだと2万円台くらいからあり、しかもそれ一つで100種類以上の音色を楽しむことができ、またそれぞれを組み合わすことができるので実質無限大の音色を出すことができます。
エフェクター同志を繋ぐ必要もないため、余計なお金もかからず経済的なのも大きなメリットです。
しかし、コンパクトエフェクターが音色の「専門店」なのに対し、マルチエフェクターは「コンビニ」のような感じです。
コンビニは色々な商品が揃っていて非常に便利ですが、全て簡易的なもので専門店には遠く及びません。
最初のうちは音の違いはわからないと思いますので、マルチエフェクターでも問題はないと思いますが、だんだんと上達していき耳が育ってくると、その違いに少し物足りなく感じる方も出てくるかもしれませんね。
まずは安く済ませたいという方や、色々なエフェクターを使って勉強したいという方にはこちらがおすすめです。
ベース用とギター用のエフェクター
ベース用のエフェクターをネットで探したり楽器屋さんに見に行ったりすると、「意外とベース用のエフェクターって種類少ないんだな」と感じた方もいるのではないでしょうか?
実は一般的にエフェクターというのはベーシストよりもギタリストの方が使っている割合が多く、発売されているものもギター用のエフェクターの方が圧倒的に多いです。
そうなってきたときに、「ギター用のエフェクターの方が種類多いし、ギター用のやつをベースに使っちゃダメなのかな?」と考える人もいるかもしれません。
アンプなどはギター用のものをベースで使うと出力などの関係で壊れてしまいますが、実はエフェクターはギター用のものを使うのは全然OKです。
壊れもしませんし、ちゃんとエフェクターの効果を出音にかけることも問題なくできます。
しかし、ギター用のエフェクターはあくまでギター用に作られたものですので、ベースとしての音の良さを損なってしまう可能性もあります。
例えば低音部行き部分がエフェクトをかけることで少し薄く感じるようになってしまったり、どうしてもギターライクな音にはなってしまいやすいです。
その点ベース用に作られたエフェクターはもちろんそこも考慮して作られていますので、ベースらしい太く無骨な音の良さが失われにくくなっているものがほとんどです。
ですので、使えなくはないですが、どうしてもベース用のエフェクターで求めた効果のものがなかったり、ギターライクな音作りにしたいという場合のみギター用エフェクターもありという感じで、基本的にはベース用のエフェクターを使った方がベース本来の良さを失わず音を作っていけると思いますのでオススメです。
初心者おすすめエフェクター3選
それでは最後に上に書いた優先すべき3つのエフェクターで私が初心者の方にオススメするものを一つづつ書いていきたいと思います。
1、コンプレッサー/EBS MulticComp Studio Edition
ベースコンプレッサーの王道中の王道の機種がこちらです。
「通すだけで音が良くなる魔法の箱」というように評されるほど信頼性は高く、プロのミュージシャン達でも使っている方は多いと思います。
コントロール部分もGAINとCOMPの2つのつまみしかないので非常に扱いやすいという点からも初心者の方にオススメのエフェクターです。
2つのつまみの間にはスイッチがあり、3つのモードを選ぶことで出音のキャラクターを変えることもできます。
1タッチで3種類の音を聞き比べることができるので、初心者の方でもなんとなくの雰囲気で自分の好きな音のキャラクターを選ぶことができるでしょう。
値段は少々張りますが、いろいろなコンプレッサーを試してこれにたどり着くくらいなら、初めからこの機種を使っていけば間違い無いでしょう。
2、オーバードライブ/BOSS BB-1X
大手エフェクターメーカーのBOSSから発売されているベース用エフェクターです。
発売当初から人気の高いモデルで、しっかりとした音圧のドライブ感を感じることができます。
こちらもコントロール部分が非常にシンプルで多く無いので、まだエフェクターを扱ったことのない不慣れな方でも安心して使っていただけるのでは無いかなと思います。
歪み具合も優しいローゲインな歪みからファズのような深いハイゲインサウンドまで幅広くかかってくれるので、一台持っておけばどんな曲にも対応することができるでしょう。
しっかりとした芯のある音を作ってくれるのでバンドの中でも埋もれにくいベースサウンドを実現することができます。
3、プリアンプ/MXR M80 Bass D.I.+
プリアンプは大手エフェクターメーカーの「MXR」からこちらのエフェクターです。
非常にクリーンでクセのない原音補正を施してくれ、ベース本来ので音の良さを演出してくれます。
ノイズを軽減するためのスイッチがついているため、初心者の方でも非常にクリーンなノイズ勝利が可能となっています。
またこのエフェクターの特徴は、「歪み機能もついている」ということです。
音のキャラクターとしてはハイゲインなディストーションサウンドで、ジャリジャリとしたドンシャリと言われるキャラクターの音なので、マッスづなドライブサウンではないのですが、これはこれで音のキャラクターとして使うこともできます。
つまみは少し多いので初めは設定に戸惑うかもしれませんが、それもまた機材に詳しくなるためには必要なことです。
値段もそれほど高くないので、コスパ的にもおすすめのエフェクターですね。
まとめ
今回はベース用のエフェクターについてまとめてみました。
昔はアンプ直のスタイルがベーシストは多かったですが、近年では多様な音楽性からベーシストも様々なエフェクターを使う機会が増えてきました。
ここに挙げたもの以外にももちろんたくさんのエフェクターがありますが、ここに書いた基礎的なものをしっかりと理解しておけば、楽器屋さんに行った時などにもちゃんと店員さんと機材についての会話ができるようになっていると思います。
そして、周りにベース仲間がもしいれば、お互いにエフェクターについての情報交換などをするのも非常に良いでしょう。
うまくこれらの機材を使いこなして、あなただけのベースサウンドを手に入れてくださいね。