ドラムを始める際に、まずやらなければいけないことはドラムのスティックを購入することですよね。
ドラムスティックさえ手に入れてしまえば、ドラムセットがなくても、雑誌や枕などを使ってスティックを扱う練習を行うことができます。
ですが、実際にものを叩く前にもう一つ覚えるべきものがあります。
それは「ドラムスティックの持ち方」です。
正しい持ち方で叩くことを覚えなければ、ドラムのタム(太鼓)に十分に力が伝わらなかったり、スティックを落としやすかったり、ちょっとした指先の怪我の原因になることもあります。
逆に初めのうちに正しいスティックの握り方を覚えておくと、その後の上達や音に大きく影響してきます。
そこで今回は、ドラムを実際に叩く前に覚えておきたい「スティックの正しい持ち方」について触れていきたいと思います。
マッチドグリップとレギュラーグリップ
ドラムスティっっくの持ち方というのは大きく分けると「マッチドグリップ」という握り方と「レギュラーグリップ」という2つの持ち方に分けることができます。
マッチドグリップ
マッチドグリップといいうのは、「Match(調和)」という名前の通り、左右が同じ握り方になっているスティックの握り方になります。
現在世界中のドラマーの9割近くがこの握り方で演奏をしています。
そして、このマッチドグリップはさらに3種類に分けることができます。
アメリカングリップ
数あるスティックの握り方の中で、最もポピュラーで扱いやすく幅広いジャンルで使われているのがこの「アメリカングリップ」です。
手の甲を体の外側に約45度傾けた形で握るような感じで、手首のや指先など満遍なく使うことができます。
見た目も非常にすっきりとした印象の構え方で、自分の腕の力がダイレクトにスティックに伝わっていくような印象を受けます。
マッチドグリップを主体としているドラマーの場合、ほとんどの方がこのアメリカングリップだと言っていいでしょう。
ですので、初心者の方はまずこの「アメリカングリップ」を覚えることをお勧めします。
ジャーマングリップ
こちらはマッチドグリップでも少しクセのある握り方になります。
ジャーマングリップの場合は、手の甲が完全に上(天井の方)を向いた状態で、手を開いた時に掌が下を向いているのが特徴です。
クラシックや吹奏楽のパーカッション部門を専門としている人はこの日切り型を採用している人が多いです。
理由としては、チップ部分を使った細かなタップストロークであったり、ロールなどの奏法がやりやすいことからこのグリップが採用されている場合がお多いです。
親指と人差し指で視点を作るような感じで握り、残りの指はスティックに軽く添えておくような感じで握ります。
この握りの場合、手首の可動が縦方向に動くので、スティックが横にブレることが少なくなります。
ですので、自分の狙った場所を叩きやすいという利点があります。
手首の可動域は全ての握りの中で最も大きく、スナップを利かせて打ちたいときにはこの握り方が最も有利と言えます。
またジャーマングリップの場合、手首からスティックの先が腕の延長線上ではなく少し内側に入るような感じで角度をつける場合が多いです。
フレンチグリップ
フレンチグリップは「ティンパニーグリップ」とも呼ばれ、打楽器のティンパニー奏者が採用していることが多い握り方です。
持ち方は、親指がスティックの上側(天井側)に来る感じで握り、ての中には少し遊びを大きく持たせるような印象です。
この握り方は、上二つに比べ手首の可動域が極端に狭くなります。
その代わり指を使った「フィンガーストローク」がやりやすく、軽やかに速く叩きやすいという利点があります。
音の粒も揃いやすいので、一流ドラマーでもあえて場面によってはフレンチグリップを採用して叩いている人も多いです。
ですが、この持ち方は手首が動かしにくいので、初めのうちに手首をしっかりと使った打ち方を身につけるためには不向きであり、初心者の方がやると手首を痛めやすいので、練習するのは後回しでいいかと思います。
レギュラーグリップ
上の3つを総称して「マッチドグリップ」と呼ぶのに対し、左右が同じ持ち方ではないグリップのことを「レギュラーグリップ」といいます。
この持ち方はマッチドグリップに比べ使うところが限られてきます。(なのになぜレギュラーという名前なのかというのは謎です笑)
一般的には右手をマッチドグリップの持ち方、左手を掌か上を向くようにして持ちます。
イメージしやすいところでは、鼓笛隊やマーチングバンドの小太鼓などでよく使われている持ち方です。
見た目的には非常に玄人感があり、マッチドグリップに比べると見た目だけでもできる人感を醸し出しています。(筆者の一意見です)
持ち方は以下の通りです。
- 左手を掌が斜め45度上を向くような感じで前に出します。
- 人差し指と薬指の間(付け根部分)に、先端が右側に来るようにスティックを挟みます。
- 薬指と小指はスティックの下で軽く曲げ、人差し指と中指はスティックの上にかけるような感じにしてスティックを固定します。
この握り方の利点は、マッチドグリップに比べ非常に繊細な音が出しやすいというところにあります。
右手と左手の握りが違うため、いい意味でニュアンスをつけやすいとも言えるでしょう。
そのようなことから、ジャズなどの演奏ではかなり一般的にこの握り方が使われます。
ですがこの握り方は非常にコントロールが難しく力加減も繊細さが要求されます。
初心者の方にはあまりお勧めできる握り方ではありませんが、マッチドグリップでの演奏に慣れてきた頃、ワンランク上を目指したくなったらぜひ取り入れてみましょう。
スティックの握る場所
それでは次に、スティックの握る位置についていくつか説明をしてみたいと思います。
ドラムスティックというのは、場所によって4つの名称に分かれていて、それらを合わせて「ドラムスティック」といいます。
まず、先端の丸く出っ張っている部分のことを「チップ」といいます。
形状は丸型/涙型/四角型など様々な形があり、素材も木製のものやナイロン製のものがありますが、とにかく先端の出っ張り部分のことを「チップ」と呼びます。
次に、チップ下のだんだんと太くなっていく部分のことを「ショルダー(テーパー)」といいます。
このショルダーというのはスティック選びの際に非常に重要な部分で、スティックの種類によってこのショルダーの長さは異なります。
このショルダーが短いということは、スティックの太くなっている部分が多いということになりますので、スティック自体の重量は重く、さらに言うとそのスティックの重心はチップ側に来ています。
逆にショルダーが長い場合は、長いスパンをかけて太くなっているといことですので、MAXに太い部分が少ないことになります。
よってスティック自体の重量は軽く、さらに重心が手元側に来ていることになります。
初心者の方は、初めのうちはスティックの重さを感じながら練習をする方がいいので、筆者はショルダーが短いものを使うことをお勧めします。
そしてショルダーの下の部分を「シャフト(ドラムスティックの真ん中辺りの部分)」といい、実際に私たちが握る部分のことを「グリップ」といいます。
このスティックを持つ位置ですが、お尻側に近いグリップ部分(スティックの終わり側あたり)を持つと遠心力の問題でスティックが重く感じると思います。
逆に、シャフトに近い感じでもつ(少しスティックの上側を持つような感じ)と、スティックが軽くなったように感じると思います。
一般的には「スティックエンドから約3分の1」くらいの場所で持つのがいいと言われています。
筆者的には先ほども言った通り、最初のうちはスティックの重量を感じながら、叩くような感触を養って欲しいので、もっとスティックエンドよりでもいいかなと思っています。
なぜ一般的にスティックエンドから3分の1くらいと言われているかというと、大体その辺がスティックの跳ね返りを感じやすい位置とされているからです。
それらを踏まえて、握る位置は下すぎず上すぎずバランスの良い場所を持つようにしましょう。
握りの支点
スティックを握る際に気をつけたいこと、それは「脱力」することです。
必要以上にギュッ!と握ってしまうと、音が死んでしまい良い音がならなかったり、叩いた時の力がうまくたむに伝わらなかったり、なんなら手首などを痛めてしまう原因になったりと、いいことが一つもありません。
初めのうちはスティックをコントロールするために力を使いたくなってしまうのはとてもよくわかるのですが(筆者もはじめはガチガチに力が入っていました)、脱力してスティックの重さを利用して叩くというのは、音質面でもプレイ面でも安全面でも非常に大切なことなのです。
ですが、何も力を入れずに叩くことはできませんよね。
なにも力を入れなかったらスティックを持ち上げることすらできません。
ここで大切になってくる考え方が、「スティックを持つ支点」です。
全ての指で”ギュ~”と握るのではなく、力を入れるべき支点を一箇所だけ作ってあげるような形になります。
そしてこれは厳密にいうと、叩く場所やフレージングによって支点を変えながら叩くというのが一般的なのですが、それはドラムに慣れてきてからの話ですよね。
初心者の方やこれから始められる方であれば、基本的には「親指と人差し指」か「親指と中指」で支点を作るのがおすすめです。
例えば、親指と人差し指の2本の指だけでスティックを挟むようにして持ってみましょう。
そうすると、その2本の指で挟んだ部分のスティックが、支点になっている状態なわけです。
そして親指と人差し指以外の指は、スティックに軽く添えておきましょう。(このときに小指だけ浮いてしまう人が多いですがそれは❌)
そして、その支点になっている2本以外の指を握ったり開いたりしてみると、うまくスティックと連動していればその指の動作だけでスティックを振ることができるはずです。
そのように、全ての指でスティックを強く持つのではなく、支点となる部分を一箇所作り、あとの指はスティックに添えておくだけという形で持つようにしていくと、視点の感覚がだんだんとわかってくると思います。
それが分かれば、自然と使っているうちに叩く場所などによって支点を変えることができるようになってくるでしょう。
実際に叩いてみよう!
ここまでスティックの基本的な持ち方について説明してきましたので、今度は実際に叩いてみましょう。
色々なグリップを紹介しましたが、ここでは一般的な「アメリカングリップ」を使ってみましょう。
支点は親指と人差し指で作り、残りの指はスティックに軽く添えておきましょう。
叩くものは楽器屋さんなどで売っている「練習パッド」などがあれば便利ですが、なければ雑誌や枕などでも問題ありません。
<手順>
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STEP.1叩くものの中心あたりにに2本のスティックの先端が来るように構えます。
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STEP.2右手の肘が肩と同じくらいの高さになるように振りかぶります。(スティックの先が地面を向くくらいまで目一杯振りかぶりましょう。)
※このときに、支点になっていない3本の指は少し開く感じになっていて構いません。
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STEP.3叩くものの中心あたりをねらんて一気に振り下ろします。
※叩いたスティックが打面から1センチくらいのところで止まるような感じで、インパクトの瞬間だけ握り込みましょう。 -
STEP.4左手でも同じことを行います。
これを交互に繰り返して、しっかりとインパクトする時の感覚を身につけましょう。
スティックの先に重りがついているようなイメージでそのお守りの重さを生かして振り下ろしていきましょう。
インパクト後、打面から1センチくらいのところでピタッと止まれるようであれば、しっかりインパクト時に握り込めている、タムに力が伝わっている証拠です。
この時注意することは、先ほども書いた通り基本的にはずっと脱力した状態を保っておきます。
振り上げている時、振り下ろすときも力は抜いた状態で、スティックが当たる瞬間にだけ一瞬握り込む力を入れます。
感あっ句を掴むのは少し難しいと思いますが、そのような意識で練習に取り組むようにしましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか?
一流のスポーツ選手なども、自分たちのプレイしているフォームというものをすごく大切にしています。
基本に忠実な美しいフォームから生み出されるパワーやパフォーマンスというのは質の高いものが生み出されるということがわかっているからです。
もちろんその基本から各々自分なりに派生をさせて自分の形を作っていくものですが、まずは基本の部分ができなければ自分の形を作っていくことはできません。
一般的に基本と言われる握り方をまずはしっかりとマスターし、慣れていくことでその先にどんな握りが自分に合うのかというのが見えやすくなってきます。
おすすめするのは以下の通りです。
- 重めのスティック(ショルダーが短く、重心がチップ側にあるもの)
- アメリカングリップ
- スティックエンドから3分の1くらいの部分を持つ
これができればとりあえずどんなジャンルを叩くにしても対応できるでしょう。
また、人の体はそれぞれなので自分に合うグリップというのも人それぞれです。
中にはレギュラーグリップがすごくやりやすいという人もいらっしゃるかもしれません。
基本のグリップに慣れてきたら、様々な握り方を試してみると新たな発見がありますよ。